Konditorei Sindern
コンディトライ・ジンデーン
ゲルゼンキルヘェンからちょっと足を延ばしたRechlinshausen という町に、知る人ぞ知るとっておきのコンディトライがあります。
ここを初めて訪れたときの感動と興奮は今も忘れられません。
そこはまさに“隠れた名店”だったのです。 |
※ピンクの枠がある写真はクリックすると拡大写真が表示されます。 |
こんなところにコンディトライがあるのかしら・・と不安になるような町はずれに突如その店は現れました。
ドキドキしながらドアを開けると、焼き菓子にマジパンにチョコレートetc. たくさんのおいしそうなスイーツが目に飛び込んできました。
と同時に、私の興奮指数は一気にはね上がりました。
お店の奥はオープンキッチン。
シェフが笑顔で迎えてくれました。
と、おもむろに※ローマジパンを取り出し「何の動物が好き?」とおっしゃるではないですか。
戸惑いながらも「うさぎ」と答えると、目の前でみるみるうちにマジパンの“うさぎ”が誕生!まるで手品を見ているようでした。
あっというまのできごとで驚くやら嬉しいやら。
マジパンというと日本ではケーキの飾りに使われる固い人形のイメージがありますが、ヨーロッパのマジパンはそれとはまったく別物です。
大人も子供もマジパンが大好き。
私も初めてフレッシュなマジパンを食べた時には、そのおいしさに驚いたものです。
ジンデーンの現在のオーナーは3代目ですが、2代目はマジパンの本を出すほどの専門家だったとか。
家族に代々伝わるレシピと技術はしっかりと受け継がれています。
※ローマジパン / 生のマジパンのペースト。ドイツではアーモンド:砂糖の比率が2:1と決まっている。
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キッチン用品がぶらさがる ユニークな厨房。 |
あっというまに“うさぎ”と“にわとり”の できあがり! |
一息ついて、仏・アルザス出身の奥様も交え、おいしいスイーツとお茶をいただきながらお話をうかがいました。
この時いただいたバウムクーヘンのおいしかったこと!
ドイツのバウムクーヘンはどっしり目の詰まったタイプが多いのですが、ジンデーンのものはふんわりしっとり。
昔ながらの秘伝のスパイスを使っているとのことで、じんわりと滋味深い味わいでした。
途中から可愛い息子さんたちもやってきて、食べすぎを注意されながらもつまみぐい。
二人ともパパの作るお菓子が大好き。(こんなにおいしいんですもんね!)
なんとも微笑ましい光景でした。
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シェフみずからバウムクーヘンを 切り分けてくださいました。 |
数人で予約すれば デモンストレーション付きカフェタイムも可能。 |
その他の焼き菓子やチョコレートなども、どれをとっても素直においしい!と思えるしっかりとした味わい。
なかでも印象的だったのはシェフにおすすめいただいた「エンガディナー」。
中には隙間が無いほどぎっしり詰まったクルミと、とろりと濃厚なキャラメルクリーム。
こんなにずっしりと重みを感じる焼き菓子は初めて!
おいしさに加え、どれもが驚くほど低価格なことにも感動しました。
「豪華なパッケージは必要ない。その分品質の良いものを安価で提供したい。」とジンデーン氏。
おっしゃるとおり、どれもシンプルすぎるほどのパッケージなのは“味で勝負”できるからこそなのですね。
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カシスのうまみたっぷりのコンフィチュール。
サクサクと軽いクッキー。
ふんわりしっとりバウムクーヘン。
ずっしり濃厚なエンガディナー。 |
ふと壁に目をやると「クープ・ド・モンド」のポスターが。
なんとシェフはドイツ代表のリーダーを務めた方だったのです。
これまでに経験されたお店を伺ってみると「フォション」に「ヴィタメール」はじめフランスやベルギーの名店の名がずらずらと出てくるではありませんか・・びっくりしてしまいました。
というのもこの辺は観光地でもないドイツの田舎の静かな町。
そんな町の片隅でこれだけの腕を持ったシェフが地元の人々のためにお菓子を作り続けているなんて・・・真の職人魂とドイツ菓子の懐の深さを垣間見た思いでした。
「好きなことを好きな場所でやっているだけ」とおっしゃるシェフは、自ら接客もなさいます。
いつもニコニコ、とにかく楽しそう。
家族もにっこり。お客様もにっこり。
優しい雰囲気に包まれたお店にいると、自然とこちらまで温かい気持ちになります。
ドイツではお菓子の世界が情報や流行に影響を受けたり、メディアがこぞってスイーツ情報を発信するということはまずありません。
そんななか、こんな素敵なお店に出会えたことの偶然に私は感謝しました。
そして「この国にはまだまだ知られざるおいしいスイーツが隠れているのだなあ」という思いを新たにし、ますます“ドイツ・スイーツ探検”が楽しみになったのでした。
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